失敗をし困難を乗り越えていく

株式会社スタイルポート
代表取締役 間所 暁彦 氏

読書好きな幼少期

Q:間所様は幼少期はどんな子供でしたか?

読書がとても好きでしたね。家には哲学書や西洋文学の名作がほぼすべて揃っていて、時間もたっぷりあったので幅広く色んな本を読んでいました。
意味が半分くらいしか分からないものもありましたが、雰囲気で感じ取っていました(笑)

知的好奇心が強い子どもだったと記憶しています。

バブル崩壊から始まる大学生時代の経験

Q:大学生時代の時に最も影響を受けた出来事を教えてください。

大学2、3年生の頃に、ブラックマンデーというバブル崩壊の前兆とされるような大幅な証券相場の下落がありました。大学に入学したときはバブルの絶頂期でしたが、バブル崩壊後はその影響があまりにも大きく、世の中全体で「儲けることは良くない」といった風潮が広まりました。利益を追求したり、付加価値をつけて儲けようとするバブル的なやり方が軽薄だと見なされる時期がしばらく続きました。

そのような中で、バブル崩壊の影響を受けた会社が次々と苦境に陥る様子を目の当たりにし、パニックによる恐怖心や群集心理の恐ろしさを強く感じました。パニックに陥り、商売を放棄してしまう人もいれば、逆に冷静さを保ち、しっかりと働き続ける人もいました。この経験を通じて、パニックに陥っても本質を見極め、やるべきことを最後までやり遂げた人が最終的に成功することを学びました。この出来事は、大学時代の記憶の中でも特に深く残っています。

Q:現在の経営に影響されていると感じる学生時代に経験したことを教えてください。

大学時代には軽音サークルに所属していました。そのサークルは割と有名なアーティストを輩出していることでも知られている、軽音サークルの中でも有名な方のサークルに所属していました。
同じメンバーで活動を続けるというよりも、ライブイベントごとにメンバーが変わるスタイルでしたので、練習して演奏するのももちろん楽しかったのですが、ライブの演出を考えたり、コンセプトを決めた上でメンバーを選ぶことにも力を入れていました。

今思えば、楽器を演奏することよりも、お客さんに喜んでもらうためにさまざまなアイデアを出して企画を考える部分に楽しさを感じていました。このように、一つの形にしていく喜びは、大学時代に育まれたのかもしれませんね。

「空間の選択に伴う後悔をゼロにする」とは

Q:新卒での就活で考えられていたことを教えてください。

新卒は矢作建設工業株式会社に就職しました。
元々は本が好きだったこともあり、マスコミ・出版業界を志望していたのですがこの業界は新卒の募集時期が他の業界よりも遅かったんです。そんな中で、就活をしたところ内定をいただけず、ただ就活が遅れている中で、残っている業界でやりたい仕事をなかなか見つけられず、路頭に迷っていました。
当時名古屋で1番大きくグループ展開をしていた矢作建設で勤務していた父親に相談をしてみたところ社長を紹介していただき、面談の中で仕事の面白さや具体的な入社後の業務についてお話をしていただきました。第一志望の業界では無かったですが、求められている場所で結果を出せるまで頑張ってみようと前向きに思えるようなお話をいただき入社を決めましたね。

同期が120人ぐらいいましたが、同期の中で1番出世してやろう、この会社の社長になってやろうと意気込んでいました。
特に自分で独立をして起業したい、などとは考えていませんでしたね。

Q:起業を決めた時にはどのような課題を解決しようとしていたのですか?

不動産とITを掛け合わせた新規ビジネスを立ち上げるにあたり、将来の日本の人口動態、新築住宅の市場規模、中古住宅のストックの質の向上を鑑みると、不動産市場は新築から住み替え主体に変化していくと予想しました。日本の住み替え市場はまだ未開拓であり、ライフスタイルの変化に伴い新しい文化が形成されていくのではないか、ということですね。そのため、新築マンションよりも中古マンションのデジタル化に焦点を当てた方が、マーケットとして広がりはあるだろうと思い、事業を形にしていくために起業をしました。

住み替えのマーケットを広げるにあたって課題になるのは、住んでいる間に物件を売り始めなければならず、住んでいるにも関わらず内覧者が土日に内見に来たり、私物がある中で写真を撮ってネットで公開をする必要がある点です。
この課題を解決するため、アメリカでも事例があったVRを活用し、ネット上で内覧が完結できる体験を提供することを目指しました。これが、スタイルポート設立当時のスタートでしたが、事業はうまくいきませんでした。

理由は、不動産流通に支払われる報酬が仲介手数料程度にとどまり、弊社は仲介手数料からしか金額をお支払いいただけないため、開発投資に見合った収益が得られなかったからです。その他にもいくつかの理由がありましたが、このままでは大きな市場にはならないと判断しました。
そこで、新築マンションのモデルルーム問題に着目し、事業モデルの転換を行います。
モデルルームを仮設で建てるだけで億単位の費用がかかり、その費用は当然物件価格に反映されますが、売り終わると取り壊し解体され、その際は大きな無駄が発生します。これを解決することから始め、戦略を展開して現在も取り組んでいます。

Q:株式会社スタイルポートの経営理念やミッションを形作る上で、特に影響を受けた出来事は何ですか?

「やがて常識になる未来」が創業時のミッションでした。このフレーズは今でも気に入っています。。しかし、社員の人数が増えるにつれて、言葉はかっこいいものの、具体的に会社としてどのようなことに取り組み、何を取り組まないのかを明確にする必要が出てきました。そこで、5年前にミッションとビジョンを一新し、「空間の選択に伴う後悔をゼロにする。」という新しいミッションを掲げました。

「空間の選択に伴う」という表現には、幅広い意味が含まれています。例えば、狭い空間では部屋のインテリアを考えることから、広い空間では都市の再開発に至るまで、本当に広い対象があります。最適な空間を作るための意思決定は、実際に完成してみないとわからない部分が多く、家具も実際に配置してみないとその雰囲気がつかめないものです。そこで、テクノロジーを活用してこの問題を解決することをミッションとしています。

このミッションは、以下の2つのロスをなくしていきたいという思いから確立されました。まず、展示用の施設を期間終了後に壊してしまうというSDGs(持続可能な開発目標)的なロス。そして、顧客との「思ってたのと違う」という認識違いが起きるようなコミュニケーションのロス。この2つの観点が結びついて、私たちのミッションが生まれました。

会社経営について

Q:日々、ミッションを社員に浸透させるために意識をされていることについて教えてください。

当社はミッションを達成するために「Be Innovative(まだ世の中に存在しない新しい価値をつくろう)」「All For One(チーム力を最大限に発揮して大きなWillにチャレンジしよう)」「Play Fair(オープンかつ誠実な姿勢で公正をつらぬこう)」の3つのバリューを掲げています。
そして、半年に1回「Our Value賞」という表彰を社内でしています。これは各バリューを体現していたメンバーへ表彰をしています。他にもコミュニケーションツールでスタンプを作成し、業務内で積極的にスタンプを使用したり、社内の人事評価制度で加点項目として組み込んだりと業務や評価へすぐに反映されるような仕組みを構築しています。

Q:会社経営やお仕事をされる中で、大切にされていることはありますか。

失敗をきちんとできる会社であることが、非常に重要だと考えています。つまり、失敗をしても会社全体でそれを昇華しながら成長していける強いビジネスがなければ、そもそも失敗することすらできません。また、小さな失敗に対して責任を押し付けられることを恐れ、何も行動しない環境では、ビジネスの進化は全く期待できないと考えています。

当社のビジネスは将来大きなマーケットになるであろうとあらかじめ証明されているような領域へ参入をしていません。そのため、手探りながらも自らプロダクトやサービスを作り、うまくいかなければ修正するというプロセスを高速で繰り返しながら現在に至っています。失敗を通じて真理に近づいていくというような考え方を大切にしています。

それと、PDCAを何度も高速で回していく中では「イシュードリブン」の考え方は非常に大切にしていて、何故これをしているのか、どんなペインを解決したのかを明確にすることは常に意識しています。

「それって元々の上位概念は何だったっけ?」とか「今手段の話をしているけれど、これって何のために必要なんだっけ?」といった点を、優秀な人であってもつい飛ばして話が進んでしまうことがあると思います。そこで、何のためにやっているのかを常に意識するために、イシューが何であるかを確認することを、口癖にするほど意識しています。

何のための仕事かを忘れて、ただ売上やKPIだけを追いかけるケースもあると思いますが、そうすると本質からどんどん離れてしまいます。そのため、この点には特に注意を払っています。

未来をつくる大学生へ

Q:どんな人材を求めていますか?
当社ではリモートワーク・フルフレックス制度を設けています。そのため、自己管理能力や日々のタスクの進捗を細かく共有できるような能力は必須です。
また、リモートワークを行う中では国語力が非常に重要だと考えているので、採用時には言語能力の試験を行っています。そのため、元気でハキハキしていて感じの良い方でも、言語能力が低いと判断した場合は、泣く泣くお見送りすることもあります。また、コミュニケーション能力や、困難な状況でもやり抜くマインドセットも重視しています。
学生時代も含めてハードシングスを乗り越えた経験があるかどうかは、採用時に具体的にお聞きしています。
スタートアップの企業なので、逆境や困難を乗り越えた経験は大きな糧になると信じています。
Q:インターンやベンチャー企業、起業に関心を持つ大学生たちに向けて、メッセージをお願いします。

最初から立派なスタートアップ起業家のように見られることにこだわる必要はありません。実際、ほとんどのスタートアップが最初はうまくいかないものです。初めての起業で成功するケースは非常に稀で、メディアに出ている成功した経営者の多くも、2回目以降のチャレンジで成功を収めている方が多いです。

ですので、最初からうまくいかないことに焦らず、事業とともに自分自身を成長させていく姿勢が大切です。会社と一緒に成長していくスタンスを保つことこそ、成功への鍵だと考えています。

今回お話をお伺いしたのは・・・


株式会社スタイルポート
代表取締役 間所 暁彦 氏

1991年に矢作建設工業株式会社に入社し、
不動産企画営業業務を中心に13年間勤務した後、投資法人の上場業務に従事。
2006年からは矢作地所株式会社にて開発担当取締役として、
投資用不動産の企画・開発・運用、分譲マンションの企画・開発を行い手腕を発揮。
2011年7月にスタイル・リンク株式会社を設立し、代表取締役に就任。
2017年10月には株式会社スタイルポートを設立し、代表取締役に就任。

 

空間の選択に伴う後悔をゼロにする。

株式会社スタイルポートは2017年に設立されたスタートアップ企業で、日本特有の不動産流通課題を解決するためにクラウド型VR内覧システム『ROOV』を開発し、2019年にローンチしました。
現在は3Dコミュニケーション・プラットフォームへ進化し、約100社、600プロジェクト以上で採用されています。
「空間の選択に伴う後悔をゼロにする。」をミッションに、不動産業界のDX推進をサポートし、デジタルツイン技術を通じて業務効率化と豊かな顧客体験を提供しています。

会社名:株式会社スタイルポート
所在地:東京都渋谷区神宮前4-3-15 東京セントラル表参道322号室
企業ホームページ:https://styleport.co.jp

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