一度は実現を諦めた。でも好きを諦めなかったから今がある

~社会課題から新たな価値を創造する~
株式会社アイビス
代表取締役会長 神谷 栄治 氏

幼少期からプログラミングに触れる科学少年

Q:小学生の頃からプログラミングを学び始めたと拝見しましたが、何がきっかけで学び始めたのですか?

幼稚園の頃から、私は科学が大好きな少年でした。ロケットやロボット、コンピューターが未来を作ると信じていました。当時はまだ身の回りにコンピュータはなく、アニメの中でしか見られないものでした。幼稚園の終わり頃にはインベーダーゲームが登場し、小学校3年生の頃には個人でも買えるパソコンが登場しました。マイコンブームの時期に、兄と一緒にお年玉で10万円以下のパソコンを買い、プログラミングを学び始めました。当時はネットもアプリもない時代で、ソースコードが載っているマイコン雑誌を見て4時間かけて入力したり、図書館でプログラミングの本を借り、独学で勉強していました。

起業までの地道なプロセス

Q:大学生活はどのような日々を送ったのですか?

起業を目指し、「プログラミング技術を最大限に向上させる」「資本金を用意する」「一緒に会社を起こす仲間を見つける」という3つの目標を立てました。まず、プログラミング技術を向上させるため、1日4時間睡眠で学校以外の時間はひたすらプログラミングに費やし、技術書を読み漁りました。一人で作品を作るには半年かかることもあり、途中で挫折したり他のことに手を出したりすることもありました。膨大な時間をかけていましたので普通の人なら中々続かないこともあると思いますが、私はしっかり開発にハマってしまい、その結果2年留年することになりました(笑)
その2年間もプログラミングに全力を注ぎ、高い技術を身に付けました。

コンスタントに自分の作品をリリースしていたので、ネット上でトップクラスの技術者が集まるコミュニティに入ることができ、多くの友達ができました。また、リリースした作品にファンが増えていきました。大学の終わり頃には800円の有料アプリを販売し、プチヒットして何千万円も稼ぐことができました。当時はインターネットでの決済システムが普及していなかったため、郵便振替で振り込んでもらう方式を取っていました。月収100万円くらいになることもあり、大学から帰るとポストに郵便振替通知書がたくさん入っている状態でした。コンピュータ雑誌に自分の作ったアプリが紹介されることもあり、資金調達ができました。

一緒に会社を起こす仲間は見つかりませんでしたが、社会勉強のためにベンチャー企業での就職を選びました。その2年間のうちに仲間を見つけ、起業しました。

Q:ベンチャー企業へ就職してからの2年間で得られたことは何でしたか?

学校推薦で大手ソフトウェア会社の最終面接まで行きましたが、ベンチャー企業の方がその後の起業のための勉強になると思い、ベンチャー企業を選びました。ベンチャー企業では社長が近くにいるため、社員のモチベーションの上げ方や技術に対する思考などを学ぶことができました。一方で、2年間プログラマーとして働いていただけなので、営業や見積もり、設計などのビジネススキルは十分に学びきれませんでした。
当時は会社の仕組みを吸収することと、お金を貯金することを目標にしていました。ハードワークをする会社でしたが家に帰ってからも自分の勉強を続け、4時過ぎに寝る生活を送っていました。また、外部からのオファーでコンピュータ専門学校の講師を依頼され、土曜日だけ名古屋に移動して講師をしていました。

 

Q:起業をし最も苦労したことは何でしたか?

最初の軌道に乗るまでが本当に苦労しました。自社製品を作る会社として、携帯電話用のアプリを作りヒットさせるために1年頑張りましたが、売れませんでした。資本も減り、お金がなくなりかけたため、自社のアプリ開発ではなく、企業からの案件を受託する方向に切り替えることにしました。その傍で営業を始めましたが、エンジニアだったため営業は全く分かりませんでした。新人経営者としてのスキルアップの速度とお金がなくなる速度のどちらが早いかという状況で非常に大変でしたね。

エンジニアかつ経営者だからこそのこだわり

Q:ibisPaintの企画・設計を神谷様がやったそうですが、アプリの作成も含めてプロダクトをつくる際のこだわりはありますか?

一番のこだわりは速度です。アプリがサクサク動くように、ソフトウェアの技術の差が出る場所に注力しています。ibisPaintでは、ブラシを鉛筆のように使えるようにし、線が遅れて引かれないようにしています。タップするたびに反応が遅れることはユーザにとって辛いので、そのような部分を最大限の技術で設計しています。

また、ユーザインターフェースデザインにもこだわっています。iPhoneが登場してすぐにスマホ向けのデザインを取り入れ、パソコン用ソフトとは異なるパラダイムをいち早く導入しました。ボタンのアイコンデザインや画面遷移のアニメーションなど、スマホで当たり前の機能を取り入れました。今でもアイコンのサイズや角の丸さなど、細かい部分にこだわっています。

Q:今後挑戦したいことはありますか?

ibisPaintはクリエイティブ製品の一つですので、動画編集や写真加工、プレゼンテーションツールなどの方向性を広げていきたいと考えています。また、市場が拡大しているタイミングで挑戦したい分野としては、AIの領域ですね。AIは市場が拡大中であり、チャンスが多いと感じています。

最近はディープラーニングについての論文などを週末にまとめて読み、社内の勉強会で共有をしたりして理解を深めています。

日本の未来を担う大学生へ

Q:貴社では今、どのような人材を求めていますか?
弊社は「高い技術のエキスパート集団」をバリューにしています。高い技術で世界の競合他社と戦っているので、勉強熱心で技術に対する探究心が高い人を求めています。とはいえ学生の時点でとてもスキルが高い人は少ないので、勉強する習慣や向上心がある方を求めています。
Q:インターンやベンチャー企業、起業に関心を持つ大学生たちに向けて、メッセージをお願いします。

社長に必要な能力として最も大事なのは、情熱や執念です。行動力も必要です。頑張れば乗り切れると信じ、どんどん挑戦してほしいと思います。

人生において働く時間はとても長いので、楽しい仕事を見つけることができることは非常に幸せです。自分に合う仕事に対して考え方を持ち、学ぶ姿勢を持てば、楽しく働けると思います。そういう仕事を見つけていただければと思います。

今回お話をお伺いしたのは・・・


株式会社アイビス
代表取締役社長 神谷 栄治 氏
1973年名古屋生まれ

1998年、名古屋工業大学工学部電気情報工学科卒業。
小学校の頃からプログラムを組み、大学時代にFTPソフト「小次郎」を企画・開発・販売をし資本金を得る。
大学卒業後、社員50人のベンチャー企業に就職し社会人経験を積む。
2000年に株式会社アイビスを設立。
2011年にモバイルアプリ「ibisPaint」を企画開発しヒットさせた。

 

モバイル無双で世界中に”ワォ!”を創り続ける

フードロス削減を目指したECサイト、ソーシャルグットマーケット「Kuradashi」の運営。
まだ食べられるにもかかわらず捨てられてしまう可能性のある食品などを、おトクに販売している。 さらに、売り上げの一部を環境保護・災害支援などに取り組むさまざまな社会貢献団体への寄付やクラダシ基金として活用し、SDGs17の目標を横断して支援している。

会社名:株式会社アイビス
所在地:東京都中央区八丁堀一丁目5番1号 オリックス八重洲通ビル2階
企業ホームページ:https://www.ibis.ne.jp/

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