目標を定め逆算し、誰もやったことがない世界へ

株式会社Sales Marker
代表取締役CEO 小笠原 羽恭 氏

目標達成のために突き進んだ大学生活

Q:小笠原様は幼少期はどんな子供でしたか?

目標を達成するために、今何をすべきかを常に考えているような学生時代でした。

大学に入学する前はそれほど多くのチャレンジをしていたわけではなく、主に大学入試のための勉強に集中していました。小中学生時代は勉強だけでなく部活動でほぼ毎日のようにバスケットボールをしていましたが、高校からは勉強に専念するため、週3回のみ活動するボウリング部に入りました。

大学に入学後は生活スタイルが大きく変わり、様々なことにチャンレンジするようになりました。
具体的には、自分の苦手なことを克服するために時間を使っていました。
大学受験で第一志望の大学に進学できなかったことがコンプレックスで、進学先の大学で誰もが行けないような会社に入ることを目標にしました。それが野村総合研究所(以下、野村総研)に入社することでした。

野村総研に就職するために、大学1年生のときに就職活動の本を読みました。
そこでチャレンジ精神、リーダーシップ、主体性が非常に評価されると知り、その観点から面接で自己アピールができるように、これらを磨くことに注力して4年間の大学生活を過ごしました。

例えば、人前で説明する能力を身につけるために塾講師に挑戦したり、大きな声で話すことが苦手だったので中華料理店で大声で接客しないと店長に怒鳴られるような環境に身を置き克服したりしました。さらに、営業力が必要だと考え飛び込み営業に挑戦し、美容院に1日50件ほど訪問して水素水のサーバーを設置してもらう営業をしたりもしていました。

勉学を一番に優先したかったので、コンピュータサイエンスの学部での課題を22時頃まで図書館にこもって取り組み、技術力もどんどん高めていきました。こうした地道な努力を重ねた結果、スムーズに就職活動が進み、野村総研に内定をもらうことができました。人と同じことをしていては圧倒的な差をつけることはできないので、他の人とは異なる動き方を常に意識して行動していたと思います。

ビジネスコンテストでの成功体験

Q:就職後に大学時代の仲間とビジネスコンテストに出場することを決めたきっかけは何だったのですか?

ビジネスコンテストにはこれまでに8回ほど参加してきました。最初に参加したのは大学2年生のときで、PwCが主催するハッカソンでした。グループで新しい社会課題を見つけ、それに基づいてソリューションを考えるといった内容で、アプリケーションの設計に至るまでを経験し、結果として準優勝したことは非常に面白い成功体験でした。

その後も野村総研に就職してからも継続的にビジネスコンテストに参加していました。
野村総研には有志で集まって土日に開発を行う「開発合宿」というイベントがあり、そこにも参加しました。また、自分で見つけたコンテストにも積極的に参加していました。

大学時代のインターンシップ先で特に仲の良かったエンジニア2人と一緒にコロナ禍の暇な時期にデリバリーアプリの開発に取り組みました。当時はまだUber Eatsもほとんど浸透していなかった時期で、私たちが作ったデリバリーアプリはアジア大会で優勝しました。この成功体験から、優秀なチームメンバーが集まればどんなサービスでも作れると確信し、創業に向けて動き始めました。

COOの荻原とは別の日に同じビジネスコンテストに出場し、彼も入賞していました。ビジネスチームとエンジニアチームが合体すれば強固な会社になると考え、創業に向けての準備が進んだという流れです。

明確なビジョンがあるキャリア形成

Q:大学時代は野村総研に入社することを目標にしていたと思いますが、実際に野村総研に入社してから起業を目指し始めたのはいつですか?

動き出したのは社会人2年目のときで、1年目には起業を考えていませんでした。しかし、ハッカソンでの活動を通じて、出資の機会やビジネスを一緒に創りたいと思えるような方々に出会う中で、自分でプロダクトを持って事業をする方が多くのことに挑戦できると感じるようになりました。

社会人2年目に社内で新規事業の起案を行い、その起案が役員に承認されました。その結果、推進リーダーを務めることになりましたが、プロジェクトを進めていく過程で野村総研の既存事業との兼ね合いを考える必要が出てきたこともあり、自分で事業を立ち上げる方が早いと気づきました。これが起業に向けて動き出したきっかけです。

社会課題を自分の考えたプロダクトで解決するために、これまでさまざまなハッカソンに参加し、仲間も集まっていました。そこで、起業を本格的に考えるようになりました。

Q:これまでにビジネスコンテストなどに8回ほど出場し、多くの経験を積んできたと思いますが、ここまでのキャリアで乗り越えた大きな壁について教えてください。

大変だったことについて、創業前と創業後で大きく2つあります。
まず創業前に大変だったことは、野村総研での新規事業の立ち上げと、それをビジネスモデルとして成立させることでした。私はエンジニアでしたので、ビジネスの構築や売り上げに結びつける方法についての解像度が低く、実現が難しい状況でした。技術の活用にばかり目が行ってしまい、結果として必要とされないプロダクトを作ってしまうことが多かったです。非常に苦労し、悔しい思いもしました。

この状況を乗り越えるために、コンサルティングファームに転職しました。経営コンサルタントとして、お客様の新規事業の戦略立案や営業戦略立案に携わることで、以前に苦労した点を克服し、事業を作り上げる力を身につけました。

次に、創業後の大変だったことについてです。
創業当初に作っていたサービスは、ターゲットとなる市場が限られており、売り上げが大きく伸びるイメージが湧きませんでした。この状況を打破するために、シード資金の調達を始めました。しかし、営業情報に絞ってピンポイントでリサーチを進めるうちに、自分達が作りたいプロダクトではなく、競合の良い部分を取り入れたプロダクトになってしまいました。そのため、独自性が乏しく、「新規性はどこにあるのか」と問われるような、ありがちなプロダクトになってしまいました。

その際、VCに「小笠原さんたちのチームは強力なメンバーが揃っており出資したいと考えているが、新規性がまだ足りない。新規性が生まれたら出資を確定させる」と言われました。
この「新規性」とは何かを見つけるのに非常に苦労しました。調べれば調べるほど競合が多く、追い込まれる状況でした。大晦日も正月も徹夜で「新規性」とは何かを辞書で調べるところから始めたのは今となっては良い思い出です(笑)

そして新規性を見つけるために情報の整理をしました。当時から営業支援のツールを開発していたので、まずは営業の要素分解を行います。
売り上げを上げるためには、まず商談を獲得する必要があると考えました。商談獲得のためには、ターゲット企業数×商談化率で商談の数が決まるので、商談化率を上げるための指標を考えました。
その結果、正しい人にアプローチでき、かつニーズがある人にアプローチできることが重要だと分かりました。この点を満たせば商談化率が上がると考え、アメリカの事例であるインテントデータに注目しました。

これを日本で実現する方法を考え、開発を進め、アルゴリズムを作成しました。こうしてインテントセールスの手法を生み出し、Sales Markerとしてリリースしました。その結果、お客様から非常に良い反応をいただき、事業が順調に成長しました。

目標までを逆算し走り抜くコツとは

Q:貴社の社員紹介インタビュー動画内で『今後挑戦したいことはセールスの領域で世界一を目指し、2030年には形になっている』とおっしゃっていたと思います。このような長期的なスケジュールを立てる際に、学生が将来のビジョンを考える時のコツは何ですか?

まず重要なのは、バックキャストで考えることです。目標から逆算して計画を立てることが非常に大事だと思います。私も大学の4年間を野村総研に就職するという目標に向けて動きました。その結果、周囲の人が到達できないような目標をスムーズに達成できました。
これを実現するために重要なのは、ゴールイメージを明確にし、現状とのギャップを把握し、そのギャップを埋めるための具体的なアクションを計画し、忠実に実行することだと思います。

また目標を立てる際や現状との差分を明らかにする際には、専門書を参考にすることをお勧めします。私の場合は就職活動の本を参考にしましたが、他に夢や目標がある方は、それを実現するための専門書を参考にすると良いと思います。

もう一つの重要な戦略は、カテゴリーリーダーになることです。これはSales Markerで事業として取り入れている戦略ですが、キャリアにも応用できます。
例えば、営業の領域で成果を出す人は、SNSを非常に頑張っている方が多いです。SNSで人気を高めることで、有名になり、「この人から買いたい」と思わせることで商談数と成約率が上がります。SNSだけを見ていると、その人は営業成果を上げたからSNSで有名になったように見えるかもしれませんが、実は逆です。SNSで頑張ったからこそ、営業で成果を上げ、それをSNSで発信し、その結果フォロワーが増えて、さらに営業成績が上がるという好循環が生まれます。

このように、自分だけにしかできない仕事をするために、何と何を掛け合わせてその領域でトップになるかを決め、それに向けて一点突破で経験を積むことが重要だと思います。これが学生時代にできれば、面白いチャレンジができ、将来的にやりがいのある業務を任される可能性が高まるのではないでしょうか。

キャリアの上でもカテゴリーリーダーを目指すことは、有効な戦略であり、大きな成功につながる可能性があると思います。私も学生時代にブロックチェーンのカテゴリーリーダーになることを決め、野村総研でブロックチェーンの知識を深めました。その結果、社内で一二を争うほどにブロックチェーンに詳しい人材だと認められ、社長直下の新会社設立プロジェクトに2年目でアサインされるという成果を得ました。

カテゴリーリーダーを目指すことは、非常に有効な戦略で、大きな成功に繋がる可能性があると考えています。

「全ての人と企業が既存の枠を越えて挑戦できる世界を創る」とは

Q:貴社は「全ての人と企業が、既存の枠を越えて挑戦できる世界を創る」というパーパスを掲げていますが、このパーパスを決めた理由はなんですか?

私がハッカソンやビジネスコンテストに参加していたとき、多くの参加者が社会課題を解決したいという強い想いを持っていることに気づきました。しかし、その多くの人々が「プロダクトを作る方法」「ビジネスを構築する方法」「人を集める方法」「資金を調達する方法」「セールスの方法」「マーケティングの方法」の6つの方法のどれかががわからずに諦めていく姿を目の当たりにしました。実際、私もそれらの方法がわからずに非常に苦労した一人です。

こういった社会課題を解決したいと思っている人たちが会社を立ち上げ、そのチャレンジを実現できるようにしたいと考えています。自分にはできないと思われていることに挑戦すること、これを「既存の枠を越えた挑戦」と呼んでいますが、この挑戦がしやすくなるような支援をしたいと考えています。Sales Markerの存在によって、誰もが挑戦しやすくなり、社会課題を解決したいと考えている人たちがその目標を達成しやすくなる世の中を目指しており、今後はセールス領域のみならず、あらゆるビジネスの領域でこのビジョンを実現していきたいと考えています。

求める人材は「野望を持ち、既存の枠を越えた挑戦ができる人」

Q:貴社では今、どのような人材を求めていますか?

弊社が求める人材には、二つの重要な観点があります。

まず一つ目は、野望を持っている人です。
野望を持っている人は目がキラキラしていて、「これにチャレンジして、そのためにこれをやるんだ」という強い意志を持っています。困難が目の前に立ちはだかったとき、それを自分の野望を達成するための試練と捉え、乗り越えることで野望に近づくと考えます。こうした姿勢により、他の人が実現できないようなことや達成に時間がかかることでも、速やかに達成することができます。そのため、野望を持っているかどうかはとても重要視しています。

二つ目は、既存の枠を越えた挑戦ができる人です。
我々のパーパスである「全ての人と企業が既存の枠を越えて挑戦できる世界を創る」を体現できる人ですね。
これまでと同じやり方を続けていては、これまでと同じ成果しか得られません。周りの人と違った成果や、自分だけの仕事を手に入れるためには、周りとは違ったスキルを磨き、カテゴリーリーダーになる必要があります。このように考え方をシフトしていくことも重要視しています。
ビジネスモデルを作る際には、お金の集め方、人の集め方、コストの考え方など、普通はこうするという方法をあえて逆転させることが成功の鍵となるようなこともあります。
例えば、多くの小売業が価格を下げる戦略を取る中で、ルイ・ヴィトンのように価格を上げることでブランド価値を高め、グローバルに成功する戦略を取った例があります。このように、既存の枠を越える考え方を持ち、実践できる人と一緒に働きたいと考えています。

日本の未来を担う大学生へ

Q:インターンやベンチャー企業、起業に関心を持つ大学生たちに向けて、メッセージをお願いします。

起業やスタートアップへの就職、インターンに関心がある方は、まず自分がどのようなビジネスパーソンとして活躍したいのかというビジョンを持ち、ゴールを明確にすることが重要だと思います。その上で、その目標を実現するために起業が適しているのか、スタートアップ就職が適しているのか等を見極める必要があります。大手に行くことがあなたにとって正しいことももちろんあるので、しっかりと考えてみてください。
もし起業を考えているのであれば、世の中の誰もやっていないことに挑戦するのが良いと思います。

目標を達成するためには海外や国内の成功事例を学び、再現することが近道だと思います。私たちも、海外で成功している企業をベンチマークにし、それを日本でどう実現するかを考えました。その結果、Sales Markerの構想が出来て、お客様の課題を解決するプロダクトを作り上げることができました。

もし目標の立て方がわからない場合は、弊社や他のスタートアップのインターンシップに応募してみると良いでしょう。弊社は掲げている理念の通り、インターン生にも幅広い職種で”既存の枠を越えた挑戦の機会”を提供しています。

過去には、起業を目指して参加し、弊社で学んだ経験を元に起業した方もいます。
データを活用したマーケティング業務を希望したインターン生が、SNSマーケティングで大きな成果を上げ、その後新卒で入社をされて正社員として大活躍する例もありました。

自分が挑戦したいことに全力で取り組むことで、その道のスペシャリストとは異なる角度から成果を出せることがあると考えています。学生の皆さんにも、そのような挑戦の機会を最大限に提供したいと思っています。

弊社のインターンシップにて、ぜひ「こういうことをやりたい」とお知らせください。
一緒に、全ての人と企業が既存の枠を越えた挑戦ができる世界を創りましょう。

今回お話をお伺いしたのは・・・

株式会社Sales Maker
代表取締役CEO 小笠原 羽恭 氏

1994年、青森県出身。
新卒で野村総合研究所に入社し、基幹システムの開発、PM、先端技術R&D、ブロックチェーン証券PFの構築、新規事業開発に従事。その後コンサルティングファームに移り、経営コンサルタントとして新規事業戦略の立案、営業戦略立案、AIを活用したDXなどのプロジェクトに従事し、2021年株式会社Sales Marker(旧:CrossBorder株式会社)を創業。2022年国内初のインテントセールスSaaS「Sales Marker」の提供を開始。2023年Forbes 30 Under 30 Asia List選出、一般社団法人生成AI活用普及協会(GUGA)協議員就任。

全ての人と企業が、既存の枠を越えて挑戦できる世界を創る

株式会社Sales Markerは「全ての人と企業が、既存の枠を越えて挑戦できる世界を創る」をパーパスに掲げ、最新のテクノロジーやデータを活用することでビジネスにおける最適で素早い意思決定を可能にするスタートアップ企業です。インテントデータを活用して、まさに”今”欲しいと思っている潜在顧客に対して、AIが自動でセールスアプローチを行う『Sales Marker』を提供しています。インテントセールスを通じて営業・マーケティング領域における課題解決を実現します。

会社名:株式会社Sales Maker
所在地:東京都港区虎ノ門4-1-1 神谷町トラストタワー 23F
企業ホームページ:https://sales-marker.jp/corporate/

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