一度は実現を諦めた。でも好きを諦めなかったから今がある

Atlas Technologies株式会社
代表取締役社長 山本 浩司 氏

「好き」に費やす大学生時代

Q:山本様は幼少期はどんな子供でしたか?

私は慶應義塾大学の経済学部出身で、2005年に卒業しました。
学生時代から宇宙分野で起業をしたいという気持ちを持っていました。そのため、現在のJAXA(宇宙航空研究開発機構)が実施していた様々なイベントなどに参加していました。
例えば、アメリカのヒューストンで開催された国際宇宙会議に日本の学生代表として出席していました。各国から参加するビジネスパーソンや学生たちとディスカッションをしたりする機会を得ることもできて、とても貴重な経験もさせていただきました。

また、海外旅行が好きだったのでバックパッカーを趣味として、30カ国以上の国を訪れました。宇宙を目指して学びながら、旅行を楽しむ学生生活を送っていました。

Q:「Atlas Technologies」という社名や、ビジョンとして掲げている「人と産業の可能性を、解き放つ」に大きく影響を与えている、学生時代のバックパッカーとしての経験について、やろうと思った理由や特に印象に残っている出来事を教えていただきたいです。

私は北陸の福井県で生まれ育ちました。日本特有なのかもしれませんが、地方で育つと10代くらいになると外の世界をもっと見たいという欲求が自然と湧いてくる人も多いと思います。私もその一人でした。バックパッカーを始めた理由も、そういった閉ざされた世界から飛び出し、福井県から東京へ、さらに東京から海外へ行きたいという気持ちの表れだったのだと思います。

一度は夢を諦める

Q:当初は宇宙×起業を志していたと拝見しました。宇宙分野での起業を断念されてもなお起業を目指したのはどうしてでしょうか。

日本で教育を受ける際、大学進学とともに文系か理系かを選ぶ必要があると思います。
高校三年生の時、宇宙に興味があった私は宇宙の特集番組を見て宇宙産業の素晴らしさに感動し、いつか起業したいという想いが強くなり、それを掛け合わせて実現したいと考えるようになりました。

その後20代後半まで実際に宇宙業界で働くことが出来ました。そして30代に入る前に、今後の10年間をどうするかを真剣に考え始めました。当時様々な活動をしていたものの、宇宙業界での起業はその時点での自分の資質や能力では難しいと感じました。
そのため、一度宇宙業界での起業は諦めましたが、37歳までに起業するという目標は諦めきれず、フィンテックの領域で起業をしました。

Q:宇宙事業での起業からフィンテック事業での起業を目指すようになった経緯を教えていただけますでしょうか。

最初は抽象的なテーマから徐々に絞り込んでいき、最終的に金融テクノロジーの分野に行き着きました。
テーマとしては大きく分けて2つ持っていて、10年単位で長期にわたり取り組めること、グローバルに展開できるものに絞っていきました。

宇宙開発もそうですが、本当に意味のあることをやろうと思ったら必ず時間がかかるので、10年、20年と長期間にわたって耐えられるテーマが良いと考えていました。
また、グローバルに通用するテーマを探していたときに、今では有名なイーロン・マスクの話を聞く機会があり、当時彼は、人類の進化のテーマとして以下の3つを挙げていました。

一つ目は、金融IT。二つ目は、宇宙開発。三つ目は、エネルギー。

当時は彼の言うことが理解できなかったのですが、最終的にテーマを選定する過程で、学生時代にバックパッカーとして様々な都市を巡った経験も役立ちました。異なる都市を訪れる中で様々な価値が生まれ、それが交換され、経済的な価値が世界中を移動するということに興味を持ちました。この経験から、決済や金融という分野に関心を持ち、そこを自分のフィールドにしようと決めました。10年、20年という期間で取り組める壮大かつグローバルなテーマだと考えたのです。

当時日本のFintechマーケットを見たときに、次に市場が盛り上がる時に主要なプレイヤーになるのは国内通信キャリアだと思いました。そのため、ソフトバンクのグループ会社に転職し、4年間Fintechについて学ぶことができました。

逆算することによって叶う成功

Q:創業5年目という早さで上場が叶った理由はなんだと思いますか。

私は起業に際して、いつまでに何を達成するかという期限を決めていました。上場の成功確率はわずか0.3%と言われるほど難しいものでしたが、経営は逆算だと考えています。つまり、「いつまでにこうする」「こう在りたい」という目標を定め、それを逆算することで、現在やるべきことが見えてきます。

逆算をすると、現状にフィットしている部分とギャップのある部分が明確になります。
期日を明確に決め、そこから逆算してやるべきことを見出し、実行することをブレずに続けていました。これが上場を叶えるための大きな要因の一つだと思います。

もう一つ重要な点は、一人でできることには限界があるということです。素敵なクライアントや優れた社員に恵まれたことが、上場を実現できた大きな理由の一つです。これらが、上場を達成するための鍵だったと思います。

Atlas Technologiesとは

Q:社員の方はどのように働いていますか。

アトラスのメンバーの働き方は3種類あります。一つ目はオフィス、二つ目はコロナをきっかけに始めた自宅でのリモートワーク、そして三つ目はクライアントのオフィススペースで働くことです。

それぞれのメンバーがどの場所で働くかは様々で、オフィスで長時間過ごす人もいれば、プロジェクトのクライアント先で過ごす時間が多い人もいます。当社のメンバーは働きやすいようにフルフレックス制度も採用しており、働く場所や時間については各自が出来るだけ裁量を持って決めています。

Q:働く中で一番やりがいを感じる場面や面白いと思う場面はどんな時でしょうか。

コンサルティングのビジネスをしているので、クライアントの皆さんから感謝されると純粋に嬉しいです。大手の企業の役員の方と話している中で、「プロジェクトを日々進めていただいてありがとうございます」と感謝の言葉をいただくと、とても嬉しく感じます。

特に、日本を代表するような企業様から「ファイナンスやテクノロジーで困ったことがあったら、アトラスさんに支援をお願いしたい」と言われる時は、当社として提供する価値を認めてもらえたと感じ、その瞬間がやりがいを感じる一つです。

もう一つの幸せな瞬間は、メンバーが明るく・楽しく・元気に働いていると感じる時です。例えばできなかった仕事ができるようになったり、プロジェクトが成功してクライアントから感謝されたり、クライアント企業のユーザー1,000万人に影響を与えるようなサービスを一緒に作り出したりと、メンバーそれぞれがやりがいを感じる部分は異なりますが、そのような報告を聞いたりするととても嬉しく感じます。

Q:今後の展望をお聞かせいただけますでしょうか。

アトラスがこれまでに手がけてきた決済分野は金融全体の市場から見るとまだ一部分に過ぎません。金融業界には銀行、保険、証券などの広範な分野があり、金融全体を俯瞰して見た時に、私たちがまだアクセスできていない大きなマーケットには多くの需要と機会があります。これから新しい分野にどんどん進出していきたいと考えています。これを家に例えると、1階の土台になる部分ですね。

家の2階にあるのは、さまざまなソリューション・プロダクトと当社のコンサルティングの掛け合わせです。サイバーセキュリティやAIなど、尖ったサービスを私たちのコンサルティングサービスと組み合わせて、クライアントに価値を提供することを進めていきます。これにより、お客様の多様なニーズに対応し、さらなる付加価値を提供していきます。

家の3階は、海外進出やM&Aなどの非連続的な成長に向けた取り組みです。シンガポールやアジア太平洋地域でも活動していますが、オーガニックな成長に加えて、非連続的な成長も目指しています。将来的にコンサルティング会社や金融業界の枠を超えて、様々なテクノロジーなどを活用し、さらなる飛躍を遂げたいと考えています。

日本の未来を担う大学生へ

Q:現在はどのような人材を求めていますか。
当社が掲げるビジョンやミッション、価値観を共有できる人材を求めています。
当社は「Challenge the Possibilities(可能性に挑戦しよう)」「Build Leadership(全員がリーダーであろう)」「Act As One(一丸となってコトを成そう)」「 Have Integrity(常に誠実さを持とう)」「Keep It Fun(日常に遊び心を)」という5つの価値観を大切にしているのですが、これを共有できるような方とご一緒したいです。
あとは金融やコンサルティングに興味を持っているような方にも、もちろん来ていただきたいです。また、私個人としては小さな領域にとどまらず、自分のやりたいことを探していたり、そこに熱を持っているような方とも是非お会いしたいです。
当社の既存の枠組みを超えていけるような方もお待ちしています。
Q:インターンやベンチャー企業、起業に関心を持つ大学生たちに向けて、メッセージをお願いします。

成功法則については正直なところ私はよくわかりません。ただ、一つ言えることがあるとすれば、「たくさん挑戦し、たくさん失敗しましょう」ということです。自分自身もこれまでにいろいろとチャレンジをしてたくさんの失敗を重ねてきたからこそ、今の自分があると思っています。成功法則かどうかは分かりませんが、まずはどんどん挑戦して、たくさん失敗することが少なくとも自分がやってきたことであり、大事にしていることです。「偉大な失敗」をどんどんしていきましょう、というのが現時点で一番心がけていることの一つです。

今回お話をお伺いしたのは・・・


Atlas Technologies株式会社
代表取締役社長 山本 浩司 氏
福井県出身。慶応義塾大学卒業。
2008年2月、有人宇宙システム株式会社入社。
2011年6月、独立行政法人宇宙航空研究開発機構出向。
2014年4月、ソフトバンク・ペイメント・サービス株式会社(現SBペイメントサービス株式会社)入社。
2018年1月、Atlas Technologies株式会社を設立し、代表取締役就任(現任)。
2022年、創業5年弱にして東証グロース市場に上場を果たした。

人と産業の可能性を、解き放つ

Atlas Technologies株式会社は、Fintech事業の課題に一気通貫で並走するコンサルティングサービスを提供する会社です。

従来の金融機関のみならず、あらゆる産業がFintechと融合することで、従来の金融のあらゆる領域がテクノロジーによって再定義され、その結果創造された価値が世界中をなめらかに移動し、人と産業の可能性が解き放たれる社会の実現を目指しています。

会社名:Atlas Technologies株式会社
所在地:東京都千代田区霞が関三丁目2番5号
企業ホームページ:https://atlstech.com/

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