信じることが、組織を大きくしてくれる

monoAI technology株式会社
取締役
 山下 真輝

音楽に打ち込んだ学生時代

Q:学生時代は山下様はどんな学生でしたか。

母親がピアノの先生だったので、その影響で3、4歳からピアノをやっていました。
中学に入ってからはピアノだけでなくギターも始めました。気づいたら朝だったというくらい熱中して練習をして、高校二年生の頃からは少しずつお仕事をいただくこともありました。

音楽以外だと宇宙にすごく興味があったので、宇宙工学、航空宇宙みたいな学部に進学をしたのですが、在学中に「音楽をガッツリやらないか」という話があり、すごく悩んだ末、大学は中退してミュージシャンの道に進みました。

学生時代はキャリアを特段意識することはなかったのですが、やはりそのときそのときでブームはありました。小さい時はピアノをやっていたのでプロのピアニストになりたいと思っていましたし、中学生の頃はサッカーを頑張っていたので、サッカー選手になれたら良いなと思っていました。高校生の頃はギターがすごく楽しかったので、プロの道に進みたいと思っていて、結局ギターでプロミュージシャンになったのがキャリアのスタートですね。

大手事務所に入って、スタジオミュージシャンのような立ち位置でアーティストのライブに帯同するとか、CMの音楽を作って納品するとか、アーティストをオーディションで発掘したりだとかを3年間ぐらいやっていました。基本的にはスタジオミュージシャンっていう形なんですけど、プロデュース業もやっていたという感じですね。

音楽事務所時代は、納品がすごくタイトで、「3日後までに納品してください」というような期日の中で3年間やっていたんですけど、3年で3日間しか休めなかったです。大体納品日があるので、3徹して1日長時間寝るみたいな感じでずっと仕事していました。若かったので何ともなかったんですけど、今思えば大変な環境でした。

Q:音楽の道から大きく舵を切ることになったと思うのですが、起業に不安はありませんでしたか。

起業に不安はなかったです。むしろ起業に不安というよりは、そのまま事務所で働くことの方が不安でした。

2000年前半にWinnyという、ユーザー同士のパソコンを繋げると、お互い音楽をダウンロードできるソフトが流通したのですが、それによって音楽とか映画をダウンロードし放題になってしまって。

当時僕が音楽事務所にいたときはCDがヒットすると200万枚とか売れていた時代だったんですけど、このソフトが出てからすごい勢いでCDが売れなくなっていきました。そこで、「音楽業界は難しくなるのではないか」って思ったんですよね。今思えば別にそんなことなかったのかもしれないですけど、当時は不安に駆られて「もし音楽をやめるなら、どんな所で働くことになるのだろう」と考え、ハローワークに行ってみたんですよ。
でも正直、響く職業がなかったんです。紹介されたような仕事をする自分をイメージできなかったというのもあって、起業しか選択肢がないと思いました。

当時は起業って、資本金が1000万、有限会社でも600万とか資金が必要で、今みたいに1円とかできるような時代では無かったので起業のリスクって大きかったのですが、3年間の音楽活動で貯めたお金が600万ぐらいあったので、それで有限会社を作ってスタートしました。不安はなくて希望しかなかったです。

信じることが人間関係構築の要

Q:他のインタビュー記事で「人間関係がキャリアを作る」というお話を拝見したのですが、山下様は人間関係を構築するために意識されていることはありますか。

とりあえず信じるということです。

今もそうなのですが、人を信じることからまずスタートして、「最悪の場合駄目でもいいか」というスタンスでやっていると、みんな自分の予想よりも良い結果を出してくれるんですよね。信用して人を動かすことによって、人間関係がうまくいっているイメージを僕自身は強く持っています。

Q:創業初期から一貫してそのように行動されているのでしょうか。

創業初期はそんなことなかったです。当時は自分が一番できると思っていたので、全部自分でやっていたのですが、やっぱり色々な反発があったり、自分が思ってたように動いてくれなかったりしたんですよね。

会社をやっていく中で、僕はどのタイミングが一番嬉しいかというと、社員が会社のことをまるで自分の会社のように語るのを聞くときなんです。

社員にこう思ってもらえる機会を作るにはどうしたら良いかを考えたとき、みんなが主体的に動くような組織を作る必要があると考えました。そして、そのためには信じて任せてあげることが絶対必要だなと気が付きました。
創業当初は僕も好きでワンマンでやるタイプだったのですが、本当に規模が小さいときはそれでうまくいくけれども、数十人とかの規模になってくると、やはり難しくなってくるんですよね。

Q:今までのキャリアの中で特に苦労されたことや挫折されたことはありますか。

僕は今まで音楽をやったり起業したり会社組織に入ったりしてきましたが、それぞれ苦労の種類が違うなという風に思っています。例えば音楽はクリエイティブな仕事だったので、「なんだかうまく創れないな」というような自分の限界を感じるタイプの苦労が多かったのですが、企業はどちらかというと、信じていたけど動いてくれないとか、思うようにできないとか、人間関係の大変さが大きいですね。特にワンマンでやっていた創業初期は、「ついてきてくれている」と思っていたけれど、意外とそんなことはなかったというパターンが多かったと記憶しています。

それ以外も沢山大変なことはあったんですけど、「挫折」までいかないですね。ただの失敗、ミステイクみたいな感じ。でも、人間関係はやっぱり結構グサッてくるので、仕事のミスよりも全然きつい。人間関係での挫折は何回もありました。

起業はリスクではない

Q:山下様は起業されたり、会社組織に入られたりというように、環境が大きく変わる挑戦を何度もされていると感じたのですが、その決断力や行動力の源はどういったところにあるのでしょうか。

僕、「環境が変わっている」と感じたことがないんですよ。
感覚としては、周りが変わっただけで僕自身は全然変わっていないんです。

中学、高校、大学と進む中で、価値観が大きく変わることはあまりないと思います。しかし、社会人になると、状況は大きく変わることが多いですね。例えば、マーケットも10年前とは全く異なります。10年前には携帯電話が普及し、スマートフォンへと急速に移行しました。僕が音楽を始めた頃には、iモードが登場し、時代が大きく変わりました。それに合わせて僕も変化に対応してきただけなんです。

学生の間は、そういった変化に意識的に対応しようと思わなくても、自分とは関係ないところで生活できるのだと思います。しかし社会人になると、そのような変化に翻弄されることが多いので、変わらざるを得ない状況に直面することが多いです。僕を例にすると、音楽を制作している中で、Winnyのようなインターネット上のデジタルコンテンツが無料で手に入る時代の到来に危機感を覚え、変わらざるを得ないと感じました。

おそらく、学生の間は変わらなければならないというシグナルがまだ届いていないのだと思います。しかし、これから社会に出て、どこかの業界で「この業界は大変だ」と感じることがあれば、自然と変わることになるでしょう。

僕はその時々でやりたいことを優先してきたので、キャリアについて考えたことは殆どありません。例えば、始めに外資系の会社に入ってその後に起業するとか、キャリアを計画する人はたくさんいますよね。
でも、僕は常にその時一番やりたいことをやってきました。もし将来起業したいのなら、今すぐにでもやればいいと思うタイプなんです。だから、キャリアについて深く考えたことはあまりないんです。

だから、音楽をやりたかったときは音楽をやりましたし、起業したかったから起業しました。ある程度、自分で満足いくところまでいった会社は売却して、その後は自分の資本ではできないことを会社の組織に入ってやろうと考えました。小さい時から一貫して、その時のブームに乗って行動してきたので、キャリアについて計画的に考えたことは殆どないですね。

Q:ブームに乗り続けるスピード感を維持する秘訣はありますか。

私は常にその時々の流行に乗っているだけなんです。次に何が来るかは、普通に生活していれば何となく分かります。今20歳くらいの方は、スマートフォンが登場した頃はまだ5歳くらいなので、さすがにその時は何も感じなかったかもしれません。でも、20歳を過ぎて自分でスマホを使うようになると、「これ来るな」という感覚が何となく分かるものです。

流行らないものは、実際に使ってみるとわかりますよね。これは僕だけでなく、みんな何となく感じ取れると思います。だから、半信半疑でも突っ込んでみればいいのです。会社であればリスクは少ないですし、その上で起業しようと思うとリスクはありますが、今の時代は新しい分野であればすぐに資金を集められるので、実際にはほとんどリスクがないと思います。

Q:起業に失敗したとき、就職活動に影響が出るようなリスクがあると思ったのですがいかがでしょうか?
就職は普通にできると思いますよ。経営経験がある方なら、十分に可能ではないでしょうか。
私は最初にSBIホールディングスに入社しましたが、その時点では経験があまりありませんでした。しかし、自ら会社を経営してきた経験により実績や自信をつけることができました。26、27歳でベンチャーキャピタルに進むことになりましたが、自身の実績をしっかりとアピールできれば、十分に成功することができると思います。
中には、実績のない起業家や全然リスクのない起業をしている人もいます。しかし、企業側も見破るものです。実績のない人物には不信感を抱くでしょうが、形に残る成果を示せば、必ず評価されると思うので、そのような意味ではリスクはあまり大きくはないと思います。

挑戦が個人の、会社の成長の糧になる

Q:会社経営において特に大切にされていることは何かありますか。

上場企業でも非上場企業でも、規模を大きくしていくことは絶対に必要かなと思います。何故なら、どんなに人間関係がよくても、業績が伸びていかないと給料を支払うことができないからです。すると人って離れていくんですよ。だから必ず、会社の規模を大きくしていくことを経営者は考えないといけないと思っています。

社員が頑張ってくれても、それに見合った報酬を与えることができなければ良い経営とは言えません。その点について、私たちは常に考慮しています。だからこそ、新しいチャレンジを積極的に行わなければなりません。同じことをずっと続けていても、生き残ることは難しいからです。

例えば、DeNAのモバゲーやグリーなどのプラットフォームが昔は大きな存在でしたが、今ではほとんど見かけません。しかし、DeNAは他の業界で売り上げを伸ばしています。結局のところ、新しい挑戦をしなければ、会社は縮小していくものです。ですから、常に新しいことに挑戦し、会社を成長させていく意識が必要です。

Q:入社を志す方へ向けて魅力や教育体制を語っていただきたいです。

やっぱり本質的に一番大事なのは、問題解決能力だと思います。
技術や知識はどんどん新しくなっていくので、それを覚えたとしてもあまり意味がありません。でも問題解決能力はずっと残るものであり、それが一番大事だと思っています。その能力を身につけてほしいんです。

そのためには、結局は意思決定を自分でどれくらいできるかということが非常に大切なんですよ。自分で考えて、自分で挑戦し、その結果を元にPDCAサイクルを早く回して次の挑戦に進む。これが問題解決につながりますし、このサイクルを増やしていくことで必ず成長します。

なので、とにかく任せて失敗させてあげるんです。「失敗するだろうな」と思いながら任せることもありますが、何かやってもらって失敗した方が結果的には成長すると思っています。うちに来たら、とにかくどんどん挑戦させてもらえると思っていただければと思います。
うちの組織はまだ完成しているわけではなく業界も新しいので、僕と知識量がそんなに大きくは変わらないと思っています。そのため、若い社員が勢いよくチャレンジしてくれた方がうまくいったりするんですよね。

Q:今後の展望を教えてください。
monoAI technologyを上場させることがこの会社にジョインしたときの目標だったので、第一の目標は達成できました。
次は、メタバースに始まるこの会社が右肩上がりに成長するための事業設計や会社組織の強化をしっかりと進めていくことです。それ以外のことについてはあまり考えてないですね。

主体性が信頼を産む

Q:御社では今どういった人材を求めていますか。

いろいろと考え、人事には「こういう人がいい」といつも言っているのですが、結果的にそうではない人が集まってくることが多いので、最近少し自信がないんです(笑)
でも、やはり、最終的には「いいやつ」が良いなと思っています。スキルや経験も多少は重要ですが、最終的にはインスピレーションで「裏切らないな」と感じる人が良いですね。

特にリモートワークが主流になっている弊社では、仕事は基本的に性善説で回っています。だからこそ「いいやつ」、つまり信頼できる人が重要です。例えば、1日に8時間の仕事があり、新しい仕事が6時間で終わってしまったとき、残りの時間をどう使うかという問題があります。その余った2時間で仕事を探し、次に何をすべきかを自分で考えられる人が良いんです。リモートワークなので、すべての指示を出すことはできないですからね。

だから、ある程度会社のKPI目標を決めた上で、たとえその経過時点で達成していたとしても、その時間が終わったら、その先を見据えて行動できるかどうかが非常に重要だと思います。会社の事業に対するモチベーションもそうですし、そもそも人間として「いいやつ」というか、何かしてあげたいと思わせるような人が良いですね。リモートの世界では、うまくやってやろうというタイプの人は向いていない気がします。会社側はすべてを把握できないので、そういう人にうまくやられてしまう可能性があるからです。

与えられた仕事が終わったら終わり、という人もいますが、自分の中で仕事の形を持っている人は違いますね。早く終わったら、その時間を有効活用しようとする人もいます。一方で、そうでない人は、リモートで仕事をきちんと進めていないような日々を過ごしていることがあります。自分でやる気がなければ、1日中満足のいく仕事はできないでしょう。だから、主体的に考えてくれる人材を探しています。

未来をつくる大学生へ

Q:インターンやベンチャー企業、起業に関心を持つ大学生たちに向けて、メッセージをお願いします。

私は、まずは早く会社に入ることが大事だと思っています。最近、よく学生に「どんなアルバイトをしていましたか?」と面接で聞くのですが、パン屋さんやスーパーの店員さんなどが結構多いですね。他にも、家庭教師や塾講師をしている学生も多いです。しかし、彼ら全員が塾に就職したいと思っているわけではありません。バイト先に選んだ動機を聞くと、時給が良いからという理由が多いようです。

私が言いたいのは、目先の時給の良さにとらわれないでほしいということです。20代で年収が100万円や200万円というのは、人生全体から見ればそれほど重要なことではありません。ですから、目先のお金よりも、将来的に自分が何をやりたいか、そのために今何を身につけるべきかを考えてほしいのです。例えば、営業の仕事をやりたいのであれば、インターンでやらせてもらえるところはたくさんありますので、そこで実践を積んだほうが良いと考えています。

一秒でも早く自分がゴールにしていることに対して最短で行く方法を考えないと、どんどん社会に出てから置いていかれてしまいます。ですから、とにかく最短距離を取ることを考えてほしいです。目先のちょっとした給料の良さにとらわれず、自分の目標に向かって進んでほしいと思います。たくさんの面接をしてきましたが、そう感じることが多いです。

学生時代に何か特別な経験やスキルを身につけることが、将来のために重要だと思います。アルバイトでもインターンでも、実際に働いてお金を稼ぎながら社会の仕組みを学ぶことが大切です。早く自立し、充実した生活を送るために、今の時間を有効に使ってほしいと思います。ぜひ目先の利益にとらわれず、自分の目標に直結する経験を積んでほしいと思います。

今回お話をお伺いしたのは・・・

monoAI technology株式会社
取締役 山下 真輝 氏

1981年、愛知県出身。
20歳で起業し、 広告代理業、店舗ビジネスなど複数事業を立ち上げ年商15億円まで拡大させたのち売却。 その後、SBI証券にて資金調達業務などを行い、イーファクター株式会社(現metaps)に入社。 アプリリワードサービス『metaps』を立ち上げる。
2013年にライヴエイド株式会社を創業。スマートフォンのアドネットワーク事業 「Aid」をリリース。ベンチャーキャピタルから億単位の資金調達を実施。2015年9月に上場企業へ事業売却。 2016 年からはIot、民泊事業など複数手掛ける。2021年4月よりモノアイテクノロジーの取締役に就任。

先進技術で社会の未来を創造する

monoAI technologyは、メタバースやXRと言った次世代テクノロジーをいち早く取り入れ、新たなワークステージをデザインしている会社です。
誰でもどこからでも大勢で同時接続できるメタバースプラットフォームや、テストの自動化を利用したQAサービスなどを提供しています。
常に先進技術を追いかけ、目の前の顧客に向き合い、最適なプロダクトを継続的に創造し続けることでより大きな社会課題の解決を目指します。

会社名:monoAI technology株式会社
所在地:
兵庫県神戸市中央区三宮町一丁目8番1号 さんプラザ3階34号室(神戸本社)
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