「好きなものを仕事にする」とは_2/2

~ゲームで人生を豊かに!~
GLOE株式会社

代表取締役
 谷田 優也 氏

ゲーマーで良かったと思える職場

Q:職場の魅力や社風を教えてください。

社員の自由の量を増やすことです。
例えば、うちの会社では創業初期から、福利厚生で「ゲームし放題」があります。これは1日8時間ゲームができるというわけではもちろんなくて、仕事は仕事として存在しているので、普通に仕事をすると8時間かかるものを6時間で終わらせたら、2時間はゲームをして良いということです。
いくらでも残業していいという意味ではなくて、決まった時間で仕事が終わっているのであれば、何してもいいですよみたいな感じです。
だから、配信をみていたりゲームをすることは日常茶飯事です。やることをきちんとやっているということと引き換えに自由があるような環境を大事にしています。

他にも、最近大切にしているのは、「ゲームが好きでよかった」と思える人生を歩んで欲しいということです。GLOEの社員は99%くらいゲーマーです。
だから、夏休み制度がありましたが、それを
「ゲーミング休暇」というものに変更しました。
一般的な企業の「夏休み」は「夏の期間で休みたい3日間は自由に休みをとってください」という特別休暇だと思うんですが、「ゲーミング休暇」は1年間の中でゲームをやりたいと思った日に使っていい3日間の休暇なんです。例えば新作タイトルの発売日に徹夜でやりこみたいという人が、遠慮なく楽しむことができるという感じです。

また、デバイスの購入補助制度もあります。GLOEはPCメーカーさんも周辺機器のメーカーさんも幅広くお付き合いさせていただいているので、福利厚生の一環として割引価格で購入できるようにしています。
他の職場にいるよりも
環境を安く整えてゲーマーでいることができる。そういうときにゲーマーで良かったなって、会社単位で思えたらすごく良いと思っているので、そういう環境作りをしています。

ゲーミング休暇などの福利厚生「GAMING LIFESTYLE サポート制度」に関する詳細:https://gloe.jp/news/202402_gaminglifestylesupport/

ゲームで人生を豊かに

Q:今後の展望をお聞かせいただけますと幸いです。

「eスポーツの熱狂を世の中の価値に変えていく」という目的で上場しましたが、最近はeスポーツへの熱狂は一部達成してきています。
例えば、日本のeスポーツチームが世界大会に進出すると、時差の影響で夜中の3時に日本語配信をしていても、日本人だけで50万人も視聴するような状態が日本でも起こっています。
他にも、年間収入が億を超えるようなプロ選手やストリーマーが何人もいる状態になりました。メジャースポーツと比較しても、視聴の熱量や選手の環境が良くなってきたと思います。

もともとは「ゲームを特別なものにしよう」という想いでやっていたのですが、今は、ゲームが単なる暇つぶしの道具、娯楽の道具ではなく、「ゲームが日常のなかにあったおかげで自分にとって良い人生になった」と思えるような体験を作れたらいいなと思っています。

ゲームはエンタメの一つとしてすごく面白いことはみんな分かっています。
例えば最近では、スーパーマリオの映画が大ヒットしたように、多くの人が何かしらのゲームをプレイしていますし、ゲームの価値が映画に切り替わっても、そのエンターテインメント性の素晴らしさは変わらない。そこで考えたいのが、
ゲームの価値がもっと引き上がる瞬間です。
例えば、子供の教育で英語やプログラミングを勉強しなければいけないときなど、興味がなかったら面倒に思うことっていっぱいあるじゃないですか。
でも、僕の息子はマインクラフトを一生懸命やっていたことでプログラミングに興味をもって、小学校に入る前からプログラミング教室に行き始めて、ゲームを作れるようになったんです。

他にも、秋田県に平均年齢が60代後半の「マタギスナイパーズ」というプロeスポーツチームがあります。
高齢者向けのゲームをやってるのかと思いきや、VALORANTという5対5のFPSゲームをやっていて、ボイスチャットで「裏裏裏!」「スモークたくよ!」などチームメイトと声を掛け合ったり、ヘッドショットを決めて歓喜していたりするんです。

そんな姿を見ていると、高齢者が人生の最期を過ごすとき、フレイルとか認知症で選択肢を自分で選べない状態を、ゲームを通して無くしたり減らせるのではないかという希望を感じます。
今だと、リハビリの機能訓練は運動しないといけないと言われていますが、その代わりをゲームができるようになったらすごく良いし、頑張って勉強しないといけない代わりにゲームで遊んでたいら、子供が掛け算を覚えちゃいましたとか英語覚えちゃいましたみたいなことがあると、
「ゲーマーでよかったな」って子供もお年寄りも思うじゃないですか。これをどの年齢層でも領域でもやりたいです。

桃鉄ってゲームがあったおかげで、地理が分からない子どもがみんな日本中の都市の場所がわかったりとか、決算というものを知ったりできたように、最近の若い方たちで「資産運用どうしようかな」とか「NISAやiDeCoさっぱりわからない」みたいなことも、ゲーム感覚で学べるものがもっともっとアプリやゲームの中に入っていたら良いと思います。
「ゲームがあったおかげで自分の資産のことを考えるようになりました」とか。

「ありとあらゆる日常の中にゲームがあることで、より人生を豊かに感じられる」、こういうことを考えて世の中にサービスを提供してる会社は今までにあまりないんです。
この軸はGoogleやNIKEに近い考え方から生まれていて、彼らは「誰より先にプロダクトやサービス、ソリューションをアスリートのために提供する会社である」みたいな考え方をしています。
同じように「こんなのあったら便利だな」とか「こんなことができるといいな」と思ってることを誰よりも先に想像して、あなたのゲーム好きによって、あなたの人生がより良いものになるように、いろんなコンテンツやサービスを、僕らが最初に創造し続けるゲーミングライフスタイルカンパニーというのが在りたい姿なのかなと思っています。

それを実現するには、学校も作らないといけないし、高齢者施設も作らないといけないし、金融の教育もできるようにならないといけない。
となると、もういくらでもやれることがあるんです。日常におけるゲームの当たり前を変えていくっていうことを会社としてやりたいと思ってます。

Q:貴社が求める人物像について、他のメディアでは、感動体験や知的好奇心を持った若手人材を挙げられていたのを拝見したのですが、谷田社長ご自身も、挑戦するに当たって思い返すような体験があるのでしょうか。

僕にとっては、強烈なチャレンジをすることよりも、日々ちょっとした変化を自分で習慣的に起こせるようになることの方が大事です。
例えば、最寄りの駅から学校まで行くときのルートって、何となく最短で行こうとするからいつも同じ道を歩くじゃないですか。でも、あえて違う道で学校まで行ってみるとか。

僕は20代の頃に3年間、1年で同じジュースは1回しか飲めないって制約を自分にかけたんですよ。コンビニに行って「これは口に合わなさそう」と思いながら毎回違うジュースを必ず買ってました(笑)

あとは給料の何分の1かは、「面白い」ものを知るために使うことがエンタメの世界では必要だと思っています。
なぜかというと、視聴率が高い番組がなぜ人気なのかとか、HIKAKINさんのチャンネル登録者数が多いのは何故なのかとか、王道の面白さから、少し変わった面白さまで「面白さ」の幅を知らないと、世の中の面白さを一般化的に認識しづらくなるんです。自分の好きなものばっかり追いかけていくと、一般的な面白さってわからなくなっちゃうんですよね。

自分のお小遣いの何%かを、必ず毎月経験したことがないエンタメにお金を使うみたいなこともやっていました。
これってすぐにでも起こせるチャレンジじゃないですか。歌舞伎を見に行ったことある人って少ないかもしれませんが、末席だと数千円で見れるんですよ。

エンタメって足を運んでみると、想像と違う体験が得られるんですが、これをどれだけクイックにやり続けられるかも大事だと思います。「あのときの経験に比べたらこれは微妙」っていう体験価値がどんどん増えていって、自分が知っているものより少しハードルが高いことに対して慣れていくから、その連続のなかで、「これもやってみるか」みたいな気持ちになりやすくなるんです。
挑戦の動機になるような強烈な体験は、実は常日頃からやっているっていうのが答えです。

例えば、皆さん好きなものありますよね。ラーメンとかカレーとか。僕は高校生の頃、カレーのブログを作って、200杯ぐらいブログで書いていたことがあります。
当時、家のカレーしか知らなかった僕が、神保町の「ボンディ」というカレー屋さんに出会って、「世界にはこんなおいしいものがあるのか」とすごく驚いたんです。
それ以来、高校生のバイト代の一部をずっとカレーに使うようになりました。新しい経験を得るということを人間は喜べる生き物なので、どんなに小さい範囲でもいいからやってみることに価値があります。

普段は映画やテレビ、Netflixを観ている人は、思い切ってDisney+を契約したり、お笑いが好きなら劇団四季や歌舞伎、プロレスにだれか誘って見に行ってみるとかも良いですよね。

今の時代って、便利だからお金を払うというより、納得できる時間にお金を使う時代だなと思います。
たくさんお金や時間を使い、得られる体験価値はどういうものがあるかを知っていくと、勇気がどんどん湧いてくるんです。
「この金額でこれだけ楽しめるのか」と驚いたり、「こんなに払ってこれか」と感じる、こういう経験を通じて、どのくらいのコストでどんなエンタメであれば世の中の人たちは納得するのかを知ることができるんです。

未来をつくる大学生へ

Q:インターンやベンチャー企業、起業に関心を持つ大学生たちに向けて、メッセージをお願いします。

何か新しいチャレンジをするときに、うまくいかなきゃいけないって思いすぎなくてもいいということです。

実際、うちの会社では評価の仕組みを変えたりとか、新しいことをやってみますというときに、社員には本当に申し訳ないんですけど、「実験」って言ってるんですよ。
「こんな実験をやります。うまくいかないと辞めちゃうかも。うまくいったら続けるかも。」みたいな感じで。会社では、この「実験」を一緒に面白がってもらえたらいいですねっていう話をしています。
そもそも実験の概念って何かを試すとか、失敗前提でチャレンジするみたいな感じなので、学生時代に起業するとか、学生と一緒に友達と一緒に何かやってみるみたいなことを、「一緒に実験してみない?」ぐらいの気持ちでやってみる。そうすると会社を作ってみるってこれだけ大変なのかとか、事業を作ってみるとか、人にプレゼンを聞いてもらうことってこんなに大変なのか、みたいなことを一旦は知れるんです。

あとは何かわかんない全く新しいことやるときは、みんな否定してくるじゃないですか。
僕も「eスポーツの会社を作る」って言ったときはみんなに絶対うまくいかないって言われていました。
でも、
みんなに絶対うまくいかないよって言われてるぐらいが、市場で勝つチャンスだったりします。めっちゃ良いって思って共感してくれる人がいっぱいいるっていうことは、もう既に誰かが思い付いていると思うんです。でも、「うまくいかないよ」っていう人がいっぱいいるなら、自分だけがやって勝つ可能性がある。

なので、「周りの意見は成功の裏返しかもしれない」と思う。それすらも「実験」と思っているから別に痛くも痒くもない。
「死ななきゃ安い」っていうのが格闘ゲームの言葉であるんですけど本当にその通りで、全部のゲージがなくなるまでは負けじゃない。99.9%体力ゲージが削られても、負けではない。

そういうところは「死ななきゃ安い」くらいの実験感覚というか、チャレンジ感覚でいるっていうのがいいかもしれないですね。

GLOEの社訓の一つに、「挑戦こそゲームのように」というものがあります。ゲームを初めてするときに難易度を選ぶことになったら、みんな何となくノーマルを選ぶよりハードを選ぶんですよね。
そのぐらいの感覚で難しいことにチャレンジしてみてもいいんじゃないでしょうか。

▼GLOE 谷田代表のインタビュー第一弾はこちら▼

今回お話をお伺いしたのは・・・

GLOE株式会社
代表取締役 谷田 優也 氏

2010年に角川コンテンツゲートに入社し、IPデジタルコンテンツのプロデュース業に従事。2013年にマーベラスに入社後「NBA」のライセンスを獲得し、「NBA CLUTCH TIME」にて香港でiOSトップセールス一位を獲得。2015年11月に日本初のeスポーツ専門会社としてウェルプレイドを設立。2021年2月にRIZeSTと合併しウェルプレイド・ライゼストに商号変更、2022年11月にeスポーツ事業で日本初の上場を果たす。2024年2月にGLOE株式会社に商号変更。「We are the GAMING LIFESTYLE Company.」をビジョンに、ゲームをきっかけに人と社会をHAPPYにするソリューションやサービス、プロダクトを提供。かつて『ストリートファイターⅣ』で“ザンギエフ使いのアカホシ“として名を馳せた。

関連書籍「気鋭のリーダー10人に学ぶ 新しい子育て(日経BP)」

 

ゲームをきっかけに人と社会をHAPPYにする。

ゲームを続けることで得られる出会い、喜び、誇りを通して、だれもがヒーローになれる瞬間に巡り合う。GLOEは、ゲーミングライフスタイルカンパニーです。
eスポーツに関するあらゆるジャンルのイベントや大会の企画・運営、映像制作・配信、プロモーション、コンサルティングに加え、eスポーツを活用した地方創生や新規事業創出などを行っています。
ゲームが当たり前にある人々の生活様式に寄り添ったソリューション、サービス、プロダクトを提供し続けることで、ゲーム・eスポーツ業界のさらなる発展に寄与することを目指しています。

会社名:GLOE株式会社
所在地:東京都新宿区大京町22-1 グランファースト新宿御苑6F

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