最先端のメモリ技術で世界を救う!

~確かな技術と若い力との融合で未来をつくる~
株式会社フローディア
取締役代表 奥山 幸祐
 氏

前職で培った技術、経験、人脈を生かしたセカンドキャリアとしての起業

Q:奥山様は前職ではどの様なお仕事をされていたのでしょうか?

私たちは前職の頃からLSIに搭載する不揮発性メモリ、つまり電源を切っても情報が消えないメモリを作る仕事をしていました。例えばプログラムだとかデータをストアしておいて電源切っても消えずに、電源入れればそのメモリからプログラムやデータを読み出して、LSIでの計算を可能にするみたいな。そういうメモリのデバイスの作り方や設計図等の知的財産(IP)をライセンスする仕事をやっています。

Q:株式会社フローディアは、前職と同様に不揮発メモリを使ったビジネスを展開してるとおっしゃっていましたが、起業するにあたってどんな新しいビジネスモデルを考えたのですか?

2011年に独立して株式会社フローディアを創業しました。前職と同じようにメモリを使った、それでいて大企業ではやっていないやり方を考えました。

当時から、世界的に半導体は分業制になっていました。具体的には、ウエハーを作るところと、設計するところを別々の会社がやっていました。

そんな状況の中で、いろんなタイプのIPを組み合わせてチップを作る。そしてその中に、フローディアの不揮発性メモリのIPを入れ込む方法を考えました。
そうすると、自社で製造せずに設計して取引先に渡すビジネスモデルになります。
これならちょっとしたツールで手にできるだろうという確信があったので起業に至りました。

具体的なイメージとしては、私達のIPがどんどん製品に採用されていくと、例えばウエハー1枚あたりに5%、3%とかロイヤリティが入る。そういう仕組みです。最近になって、この事業は軌道に乗ってきました。そうした仕事で確実にお金を稼ぎながら、開発を並行して進めています。

高い技術力を強みに、若手とともに成長し続ける

Q:2021年には東京都の「未来を拓くイノベーション TOKYO プロジェクト」に採択されたりなど、近年株式会社フローディアの技術に着目される機会が増えてきているのではないかと思います。どんな革新的な技術があるのでしょうか?

恐らく2026年あたりになるとAIで計算をするためのデータセンターで使われる電力が日本全体で作ってる電力と同じくらい膨大な量になると予想されています。

そうすると電力供給は破滅してしまうでしょう。そうした最悪のシナリオから世界を救うために、電力消費の激しいAI演算をメモリの読み出し動作に置き換えることができるコンピューティングインメモリのという私たち独自の技術が使えると思っています。

私たちの技術ならば、消費電力が、従来の数百分の1、数千分の1の電力でできます。そして発熱もせず、非常にコンパクトに制作ができるため、社会実装への障壁も少ないことが特徴です。

私自身、大学には行かずに高校を卒業してすぐ、日立に1973年に入社しました。
技術開発部という部署に配属されて、半導体の信頼性を検証するような業務を行っていました。

具体的には、製品不良が出た際にその不良の原因は何だろうといろいろ調べるような仕事でした。やってみると、非常に面白くて、知識や経験が自分のものになる感覚がありました。

その後、それまでの知識と経験を活かせるようなプロジェクトリーダーの仕事もしました。現在でも前職で縁のある人たちとずっと関係が続いています。前職では開発をずっと引っ張ってきまして、そのときの部下が、今弊社の技術の最高責任者をしている谷口です。このように前職の経験や知識、人脈は現在でも生かされていると思います。
確かな技術や経験を持った人たちが集まって私達のデバイスを作っています。

(山登りの際の写真を見せながら談笑されている奥山様(写真左)と山口様(写真右)様子)

Q:御社の今後の展望について教えてください。

私たち株式会社フローディアの名前は、フラッシュオンオールメディアをもじってフローディアになっているんですよね。
フラッシュというのは不揮発性メモリの一種のフラッシュメモリですが、私たちは不揮発性メモリを全ての電化製品に使えるようにしようという意味で、フローディアという名前をつけました。

それを実行していくために、単純に不揮発性メモリとしてプログラムとかデータを蓄えるだけではなく、AIに使ってみたいという思いがあります。

(山口様)
そこに関しては私からお話させていただきます。
先ほどAIの発達により、電力消費量が大きくなっていくという話がありましたが、そうすると電力がAIの上限を決めているという世界がやってくると予想しています。
さらにはAIの進化を支えてきた半導体の集積度向上も鈍化しており、こちらも単位面積当たりの消費電力が高いことが原因の一つです。

メモリ内で演算すること(=コンピューティングインメモリ)は、人間の脳にインスパイアされた演算手法であり、非常に高い電力効率を実現できます。

将来的には人間すら超える可能性があると思ってるのですが、そのためにはメモリ技術が大事なんですね。日本にある技術で高精度でちゃんと読み込み、書き込みができる技術。
そういったことを考えた時に、この会社だったらできるだろうなと思って入社を決めた経緯があります。

成功の秘訣は「全てオープン」にして信頼関係を構築すること

Q:成長をし続けていけるような企業であり続けるために、何かモチベーションを保つコツなどあればお聞きしたいです。

やっぱり一つは資金をきちっと確保できるような会社であることです。
いろんなところから投資してもらえて、自分たちできちっと売上を上げて資金をちゃんと確保できること。私たちに今一番大事なのはフラッシュIPの事業で、きちっと利益を上げられるようにしていくことです。

今ようやく私達の主力製品が使われてきている段階にあります。おそらく、本当に製品化して使われるようになるには2026年くらいから、そこで初めてロイヤリティが入ってくると思います。それまで何とかサバイブしなきゃいけないですね。

去年から商社に協力をしてもらい、世界市場の窓口を見つけてもらっています。そこで私達の売り込み先を見つけて、その成果が今年から来年にかけてようやく少しずつ見えてくる予定です。

ロイヤリティが1、2年後に入ってくる予定だから、それを判断材料にした投資を投資家にお願いする。投資をしてもらうためにいろいろ夢語りをする。それが今は大事で、先行投資してもらわなきゃいけないんですね。その資金をもとに、将来に向けて事業を展開していくというのが今の段階です。

色々なところが投資をしてくれているから今活動できてるんですね。だからそういう投資がないと潰れてしまう。

特に、私たちはハードウェアの技術を作っていかなきゃいけないのですが、ハードウェアが本当にいいかどうか評価されるには、十数年かかることが多いです。

今の体感は8合目ぐらいに来てるかなって感じですね。まだ完全に登りきっていない途中ということで。

Q:投資家から先行投資を受けるために、どんなことを工夫されているんですか?

一番大事なのは、情報をオープンにすることです

弊社で具体的に取り組んでいることは、全社員出席の会議で、現状をきちっと伝えるようにしています。良いことも悪いこともです。
そこで信頼関係を作ることができると考えています。

株主に対してもマネジメントレビューミーティングを毎月開催しています。全株主に対して現状の説明をさせていただくようなお時間をいただいています。

我々のような、成果が出るのに時間がかかるモデルの会社にはこういったオープンな開示が必要だと思っています。そこに不信感があると、次の信頼を得るのに相当時間がかかってしまうので。

例えば、新しい投資家を見つけるにしても、信頼があるから既に投資いただいている方から、「ここにもっと違う人を紹介しよう」と思ってもらえることもあります。情報をきちんと共有しておくことが、その後の事業の展開にも繋がってきたと思っています。

Q:良い情報だけではなく、悪い情報も公開するとのことでしたが、そのスタンスは創業当時から一貫されてきたのでしょうか?

そうですね。ずっと続けていることです。
悪い情報を隠したとしても、年に1回決算は必ずあるので、そこで赤字だなんて急に出てこられたら株主の方は困りますよね。だから毎月毎月私たちは開催しています。

お互いのコミュニケーションの中で、本当の信頼関係ができると思っています。
その代わり、毎月悪い情報を開示することは結構メンタルに来る部分もあります(笑)

若い力と経験豊富な力を融合して新しいイノベーションを起こす

Q:貴社にはどんな人材が集まっているのでしょうか。

大きく言うと設計屋さんですね。
不揮発メモリを動作させるための回路やその回路のレイアウトを設計する設計屋さんと、デバイスの作り方とかデバイスの特性を評価する設計屋さんが集まっています。

回路/レイアウト設計に関しては台湾の清華大学のインキュベーションセンターと協力していて、とても若い台湾の方が多いです。フローディアの経験豊富なエンジニアの技術と、台湾の若い力の両方を連動させています。

どういうデバイスにすればいいか、どういう不良が起こるかなどを判断することはある程度経験年数が必要なので経験豊富な人材は不可欠です。また、同時にそうした現場を勢いある若手が引っ張っていってくれている。

そういうみんなが融合して一つの会社になってると思ってますね

Q:山口様、実際に御社で働いてみての印象を教えてください。

(山口様)
プロフェッショナルで楽しいです。

わたしは大学院に通う中でフローディアにスカウトされて入社したのですが、会社は大学教授のような方がいっぱいいるような環境です。鋭い意見をもらえて、楽しく専門的な議論ができています。自分が「わからない」と聞いたことに詳しい答えが返ってくる。それはとても楽しいです。

あとは比較的働き方も柔軟です。
その辺はかなり融通が利いてるかなと思います。

Q:上下関係が厳しいとかはないのでしょうか?
(山口様)
そんなことはなくて、あくまで技術者として対等に扱ってもらえています。
休みの日には家族旅行のようなテンションで、社長と数人の社員で山登りに行ったりもしています。

未来をつくる大学生へ

Q:インターンやベンチャー企業、起業に関心を持つ大学生たちに向けて、メッセージをお願いします。

(山口様)
私は奥山さんのような長年の経験はないのですが、
私の短い経験で言うなら、踏み込むことが重要、ということですね

学生時代は、今とは違ってどちらかというとソフトウェアの専門でした。
でも、結局興味あったときにハードウェアに踏み込んでみたら、思いのほか楽しかったんですよ。楽しいことを楽しんでいたら、技術が勝手に付いてきたというような感覚です。

我々エンジニアは、自分の専門分野が固まってくると、そこに引きこもりがちになっちゃいます。自分の専門外なんだけど、一度作り込んでしまうとそれが案外楽しく感じることもあります。楽しくやると、勝手に何かの形にしてやろうと思ってやれるようになる。
最初は自信なんかなくても、一歩踏み込んでみるっていうのがいいかなと思います。

(奥山様)
私たちは2011年4月25日にこの株式会社フローディアを設立しました。
当時は、仲間と土日に町の公民館を借りて、どういう会社にしようかという話し合いを毎週毎週やっていました。

最初の段階で「どんな会社にするんだ」ということを仲間できちっと事前にいっぱい話し合って、それで方向づけしてやっていくことが一つの成功のコツだと思うんですよね。

自分1人でこういう会社をやるんだ!みたいな感じでやっていても、全体がまとまっていかないですよね。「本当にこれでやっていけるんだろうか」と初期に全員で議論できたことが非常に今でも良かったなと思っています。

当初は「とても高性能なやつをやろうぜ」と言ったら、今の仲間から「バカじゃないのか!」って言われてしまいました。大手企業がやっていないような、もっと安くて誰でも使えて、信頼性があって、使い勝手がいい。その方向を目指すべきだと指摘してくれました。

 一貫してその方向で事業を進めてきたことが、最近になってようやく認められてきていると実感しています。

起業初期の段階で、方向性をあやふやにしてしまうと大体失敗するので、忌憚なく意見を言ってくれる仲間の存在にとても助けられてきました。

今回お話をお伺いしたのは・・・

株式会社フローディア
代表取締役 奥山 幸祐 氏

日立製作所・ルネサスエレクトロニクスにて、自動車エンジン制御用MCUとして、世界で初めてのSplit Gate 型 SONOS Flash の開発をリード。
プロセスデバイス開発、信頼性解析の30年以上の経験を有し、現在主流となっているSplit Gate 型 Flashで用いられているソースサイドインジェクション現象の発見者でもある

 

創意工夫、和と誠

2011年4月、ルネサスエレクトロニクス株式会社で20年以上の経験を積んだ7人のエンジニアが、株式会社フローディアを設立。メモリデバイスや回路設計、製造プロセスや品質保証に関する深い知識を持った経験豊富なエンジニアが集まり、高品質の不揮発性メモリIPを世界中へ提供している。
フローディアの基本理念は、チャレンジ精神を尊重し、全従業員の知恵と努力によって人類の利便性向上に貢献すること。公正かつ誠実な姿勢で仕事に取り組み、お客様のニーズに真摯に対応している。

会社名:株式会社フローディア
所在地:東京都小平市小川東町1丁目30−9 マルメゾン2F
企業ホームページ:https://floadia.com/jp/

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